| ブルース・ブロートン |
| Bruce Broughton 1945〜 |
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★ ジェームズ・ホーナー、アラン・シルヴェストリ、マーク・シェイマン……並み居る中堅作曲家の中でも群を抜いて質の高い仕事をしているのがブロートンです。 『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』でシンフォニック・スコア・ファンの注目を集めた彼は、その後の『シルバラード』、『ムーンウォーカー』(マイケル・ジャクソン主演)などで老練なファンたちを唸らせる手腕を示しました。 緻密な対位法的な書法、鮮やかな楽器用法(オーケストレーション)、そして、何よりも伸びやかな旋律と豊かな音楽性……彼のスコアは、とても時間に追われて書いた伴奏音楽とは思えない純音楽的な完成度を示しています。 ぜひ、彼の音楽に耳を傾けて下さい。その職人的に磨き上げられたクリスタルのような精巧なスコアを味わって下さい。 |
=Contents=
ブロートンは1945年3月8日、ロサンジェルスに生まれました。
1967年に南カリフォルニア大学 (USC) 音楽学科を卒業すると、そのままテレビ業界に入り、1968年には連続テレビ・ドラマ「ハワイ5−0」を手掛けます。
その後しばらく目立たない時期が続きますが、1974年以降、「ダーティ・サリー」、「Dr.刑事クインシー」、「オレゴン街道 <未> (The Oregon Trail)」、「ローガンズ・ラン」などのテレビ・シリーズを次々にこなしていきます。
1977年、テレビ・シリーズ版「西部開拓史 <未> (How the West Was Won)」で注目を集め、人気シリーズ「ダラス」(1978)に抜擢されます。
1982年はブロートンの躍進の年となります。
この年のテレビ用映画『カウボーイ <未> (Cowboy)』が大ヒットして、ブロートンの名声を高めました。
しかし、彼が本領を発揮したのは、テレビのミニ・シリーズ「引き裂かれた祖国/ブルー&グレイ」の方でした。南北戦争を舞台にしたこの映画で、ブロートンのアメリカ的なスコアは存分に鳴り響いたのです。
その後もブロートンはテレビ映画で手腕を発揮していきます。
中でも『アテネ、1896年−−最初のオリンピック <未> (The First Olympics: Athens 1896』(1984)が好評だったため、1985年秋からスピルバーグがNBCを通じて放送した連続テレビ・シリーズ「世にも不思議なアメージング・ストーリー」のスコアも任されます。
このドラマの音楽は、ジョン・ウィリアムズ、ジェリー・ゴールドスミス、エルマー・バーンスタイン、ジョルジュ・ドルリュー、レナード・ローゼンマン、ジョン・アディスン、デイヴィッド・シャイア、ジェームズ・ホーナー、アラン・シルヴェストリなど、一流の映画作曲家が87人編成の管弦楽を使って腕を競うという豪華なもので、ブロートンがその一角に食い込んだということは、彼らに匹敵する実力者と認められたことを意味したのです。
ブロートンが劇映画の世界に進出していくのも、この1985年のことです。
最初の劇場用映画スコア『シルバラード』を手掛けた彼は、さっそくアカデミー作曲賞にノミネートされるという鮮烈なデビューを飾りました。
また、「世にも不思議なアメージング・ストーリー」でブロートンに注目したスピルバーグから、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』を作曲を任され、また名声を得ることになります。
その後、実力の割に名前が売れなかったものの、『ミリィ/少年は空を飛んだ』(1986)、『ムーンウォーカー』(1988)、『ミス・ビアンカの大冒険』(1990)、『トゥームストーン』(1993)、『赤ちゃんのおでかけ』 (1994)、『ロスト・イン・スペース』(1998)など秀作をコンスタントに書き続けている実力派です。
(詳しくは後日記載の予定。すんません!)
『アテネ、1896年−−最初のオリンピック (The First Olympics: Athens 1896』 TV (1984)
★★★★
メジャーデビュー以前に手掛けたテレビ映画ですが、ジョン・ウィリアムズを彷彿とさせる輝かしいファンファーレは唖然とする素晴らしさ。
『シルバラード (Silverado)』 (1985)
★★★★
ブロートンの記念すべきメジャーデビュー作。
『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』とは対照的に、ホルンなど金管をばんばん鳴らしてパワー全開!
「Slick, Then Mckendrick」のような活劇スコアもオケの迫力で聴かせます。
『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎 (Young Sherlock Holmes)』 (1985)
★★★★★
『シルバラード』と共にブロートンの初期を代表する格調高い傑作。映画は少年時代のシャーロック・ホームズを主人公にしたS.スピルバーグ製作総指揮の冒険ミステリー。
溌剌として気品に満ちた「ホームズ」のテーマを巧みな変奏で展開していく手練手管には、思わず感心させられます。特に「明かされた謎 (Solving the Crime) 」での伸び伸びとした発展には唖然とするばかり。(「ホームズ」のテーマが「シルバラード」のテーマに似ているのはご愛敬。)
もう一つの聴きものは「解かれた謎 (The Riddle's Solved) 」。穏やかな弦楽合奏による導入ののち、ホームズのテーマを扱って発展します。テンポが上がるとエンド・クレジットとなり、フルートに始まるメイン・テーマが展開したあと、オーボエで愛のテーマが奏されます。誇らしげな金管のリズムにのってホームズのテーマが登場すると、厚みのあるオーケストラがこれを発展させていきます。
2002年にサウンドトラックの完全版が発売された際、ブロートンは次のようなコメントを寄せています。
〔前略〕スコアの骨格を成すいくつかのテーマやモティーフがある。最初は「捜査の主題 (investigating theme) 」で、メイン・タイトルでピッコロに出てくる。二番目はホームズのテーマで、「明かされた謎 (Solving the Crime) 」の基礎となる行進曲風の冒険テーマだ。愛のテーマはホームズのテーマの変奏である。ホームズの尊敬するワックスフラッター教授の動機(モティーフ)、「フェンシング」の動機、それから、寺院で合唱版で最初に聴かれるラメテップの主題もある。たぶん、そこかしこに紛れてしまったものが他にもあるが、そうだとしても忘れてしまった。おやおや。作曲したご当人が忘れてしまったのでは、我々も知りようがありませんね。
『ハリーとヘンダソン一家 (Harry and the Hendersons)』 (1987)
★★
心温まると言えば心温まる映画ですが、まあ、巨大マペットおとぎ話といったところ。
スコアはそれにふさわしく、モーツァルトのオペラの序曲を模したメイン・タイトルで始まり、親しみやすいビッグフット(アメリカ版雪男)のハリーのテーマがフルートで演奏されて心に染みます。
主題歌「愛は生き続ける (Love Lives On) 」はハリーのテーマをもとにプロートンとバリー・マンが作曲、シンシア・ウェルとウィル・ジェニングスが作詞、ジョー・コッカー (Joe Cocker) が歌っていますが、残念ながら凡庸な出来。
「ハリーを探して」の冒頭、管弦楽が高鳴るところはコープランドを思わせる好スコア。アクション・スコアでもゴールドスミスの影響は明らかなものの、協和音による挿入句などブロートンらしさが出ています。
『ドラキュリアン (The Monster Squad)』 (1987)
★★★1/2
ブロートン全力投球の力作スコア。映画の内容が内容なので、管弦楽の絶叫が続き、ちょっと疲れますが、スコアが良くできていることは間違いありません。
「Do Us No Harm」はオネゲル (特に「クリスマス・カンタータ」導入部) 風に暗く始まり、やがて恐怖の爆発となり、女声合唱も使った様々な音色が押し寄せてきます。
「The Vortex」では恐怖が歓喜へと変わり、管弦楽がその雰囲気の変化を見事に描いているのが聴き所です。恐ろしい怪物のテーマが最後に可愛らしい行進曲になるのはご愛敬。
サントラ録音がやや平板でエコーに乏しいのが惜しい。
『ビッグ・ショット (Big Shots)』 (1987)
★
うーん、あまり特徴のないスコア。
『ハート泥棒 (Cross My Heart)』 (1987)
★★
こういうのって、「ご機嫌なクロスオーバー/フュージョン系のスコア」とでも言えばいいんでしょうか。管弦楽ではありませんが、サックスのテーマが耳に残ります。
『スクエアダンス (Square Dance)』 (1987)
★
ギター独奏、ブルージーなハーモニカ、フィドルを模した独奏ヴァイオリンなどが醸し出す古きアメリカの夜の光景。
『プレシディオの男たち (The Presidio)』 (1988)
★★★1/2
転調が見事なトランペットによるテーマはホーナー風の泣かせるメロディ・ラインで、「エンド・タイトル」でたっぷりめに聴けます。「愛のテーマ」ではフュージョン風のサウンドにアレンジされています。相変わらずオケの扱いが上手。
ただ、このメロディは余り展開されず、アクション・スコアでは耳障りでニューロティックな現代曲となってしまいます。
『ムーンウォーカー (Moonwalker)』 (1988)
★★★★
マイケル・ジャクソンは実は宇宙船型生命体だったのかあ、と思わす異様な映画ですが、音楽もそれに合わせて不気味に始まります。
何事が起きるのかと思わす雰囲気作りは実にうまい。そして、緊張が高まった頂点で、ぶぁあと金管が朗々たるテーマを吹奏するそのカタルシス(浄化作用)たるや、何とも爽快!
『マフィア/最後の祈り (Last Rites)』 (1988)
★
荘重なバロック音楽風のメイン・タイトルで、中間部でバッハ風のトッカータになります。
『奇跡の旅 (Homeward Bound: The Incredible Journey)』 (1988)
★★★
家族向け動物映画でも決して手を抜かず、明朗で健康的な音楽を腕達者なミュージシャンを集めて楽しませてくれます。
アメリカの庶民的音楽(例えばスクエア・ダンス)が見事な管弦楽曲になっています。
『レスキュー (The Rescue)』 (1988)
★★1/2
明朗な典型的冒険スコア。決して悪くありませんが、音楽もオーケストレーションもちょっとありきたりかな? ブロートンならもっと質の高い音楽を書けるはず。時間に追われたか?
『ジャックナイフ (Jacknife)』 (1989)
★
ヴェトナム帰還兵を扱った社会派映画のための音楽は、オーケストラではなく、トランペットをフィーチャーして打ち込みを大いに使った渋いスコア。
『ビアンカの大冒険/ゴールデン・イーグルを救え! (The Rescuers Down Under)』 (1990)
★★★★
二匹のネズミを主人公にしたアニメ・アドヴェンチャーですが、その音楽たるや『レイダース/失われたアーク《聖櫃』(1981)、『ロマンシング・アドベンチャー/キング・ソロモンの秘宝』(1985)、『ウィロー』(1988)を彷彿とさせる、輝かしく颯爽とした管弦楽スコア。
『カナディアン・エクスプレス (Narrow Margin)』 (1990)
★
サスペンス・アクションものであり、耳をつんざく絶叫が続く。音色に工夫を凝らしているのは分かりますが、生理的に不快な音が多く、音楽として聴くにはちとつらい……。
『本日はお日柄も良く/ベッツィの結婚 (Betsy's Wedding)』 (1990)
★★1/2
なかなかヴァラエティに富んだコメディ・スコアです。
『タイニー・トゥーン ("Tiny Toon Adventures")』 (1990)
★★
ブロートンはアニメのスコアを書かせても超一流。WBアニメ(ルーニー・トゥーン)のカール・スターリングを思わせる賑やかなスコアは、すばしこさ、ギャグ、ミッキーマウジングなどの要素がてんこ盛り!
『新・老人と海 (The Old Man and the Sea)』 TV (1990)
★1/2
ギターと弦楽合奏だけでヘミングウェイの『老人と海』に音楽を付けた意欲的スコア。ラテン的情熱溢れるギターと弦の掛け合いは聴きものですが、全曲を通して聴くと単調で、弦のアンサンブルにももっと精度とパッションが欲しいところ。
『O Pioneers!』 TV (1992)
★★1/2
音楽から推測すると西部開拓ドラマと思われます。ピアノをフィーチャーした管弦楽で、西部を思わす民謡風旋律を用いたスコアが展開されて行きます。
ブロートンだけあって平均点以上ですが、他の彼の作品と較べると特徴に乏しいのでやや点を辛くしています。
『ジャイアント・ベビー (Honey, I Blew Up the Kid)』 (1992)
★1/2
コメディ用としては大変良くできたオーケストラ・スコアです。ただそれぞれのキューが断片的で、アルバムを通して聴くと騒々しく疲れる感じです。メイン・テーマが様々に展開・拡大されて現れるのが聴き所でしょうか。
サントラの演奏は素晴らしい。ブロートンのためならロス中から飛びきりの腕こきミュージシャンがいくらでも集まってくるんだなあ、という変な感慨を懐いてしまいました。
『カウチポテト・アドベンチャー(チャンネル・アドベンチャー <VD>) (Stay Tuned)』 (1992)
★
典型的アニメ・スコア。画面に0.1秒単位でぴたりとシンクロさせ、豊富な音楽的表現を詰め込むのは大した腕。有名旋律の引用に溢れているのも昔のアニメの手法を踏襲しています。
欲を言えば、アニメの古典手法をなぞってノスタルジーを満足させるだけでなく、現在ならではの表現へ進化させて欲しいですね。
『トゥームストーン (Tombstone)』 (1993)
★★★1/2
ちょっと金管や打楽器がやかましすぎる感じもしますが、とにかく、映画『トゥームストーン』のダンディズムをこれほど明確に音に移せる作曲家といえば、やはりブロートンしかいないでしょう。テーマのかっこよさには異論なし。
『バラ色の選択 (For Love or Money)』 (1993)
★★★
サックスをフィーチャーし、バックのオケの色彩も大変豊か。
『ハネムーンは命がけ (So I Married an Axe Murderer)』 (1993)
★★
ホラー映画のパロディ物にふさわしく、メイン・タイトルはおどろおどろしく始まり、エレキ・ギターが転調を繰り返す落ち着かないテーマを繰り返すが、いつの間にか陽気に踊りまくっているのです。劇中アンダースコアでは手慣れた管弦楽を聴くことが出来ます。
『赤ちゃんのおでかけ (Baby's Day Out)』 (1993)
★★★★
弦の刻みに乗って、オーボエが可憐な「赤ちゃん」の主題を乗せ、お出かけが始まります。と言っても単に可愛らしさを強調したものではなく、ダイナミックな盛り上がりも見せれば、巧みな管弦楽法で音色の妙を聴かせ、プロコフィエフ風の奇妙な和音も使う……といった変幻自在なスコア。
『34丁目の奇跡 (Miracle on 34th Street)』 (1994)
★★★★
ミ-ド-レ-ソという単純な鐘の音階から、こんなにもゴージャスな管弦楽曲を組み立てられるのか、という驚くべき作曲のお手本。管弦楽の効果も目覚ましいし、シンフォニックなスケールの大きさも充分。
『犯罪捜査官ネイビー・ファイル ("J*A*G")』 (1995)
★★★★
ブロートンが書いたのはオープニング・テーマの音楽(47秒)ほか数曲だけですが、軍楽調のこのテーマが実にかっこいいのです。実際にはハープも含めた大管弦楽で演奏されるので迫力も抜群。
アクション・スコア「High Flying」でも騒々しい無調音楽にはならず、一つの音型をフガートで積み重ねるという音楽的アプローチで、耳にも楽しいスコアになっているところが、ブロートンの進境の著しさを感じさせます。
『密会 (Carried Away)』 (1996)
★★1/2
オーボエの導入が遠い過去を呼び覚ますような「メイン・タイトル」、ピアノの澄んだ響きが情感に満ちた弦合奏を引き出す「大洋にて」など、全般に思い出に浸るようなヒーリング系のスコア。
『奇跡の旅2/サンフランシスコの大冒険 (Homeward Bound II: Lost in San Francisco)』 (1995)
★★★★
『奇跡の旅』(1993) の楽しさそのままに、さらに緻密でスケールの大きい音楽が展開される秀作。
主人公たちのライトモティーフの変奏はため息が出るほど見事だし、オーケストラの迫力も第1作(ややオケが小規模だった)を完全に凌駕。
ブロートンがライナーノートに寄せた言葉を載せておきます。
いつもながら、どんな映画でもその成功は関係者の膨大な協力の賜物です。監督デイヴィッド・エリスと製作者ジム・ペンテコストの先見性と熟達した腕前がなければ、スコアは随分と違ったものになったでしょう。そしてまた、この録音に貢献した多くのハリウッドの音楽家や録音技師たちの卓越した能力がなければ、スコアはただの悪気のない落書きに過ぎなかったことも確かです。これら全ての芸術家及び友人たちに、さらにその他大勢の方々に、多大なる感謝の念を抱いています。ブロートンの穏やかな人柄が感じられるコメントですね。
『インフィニティ 無限の愛 (Infinity)』 (1996)
★★★
純愛物語の透明感溢れるスコアです。
フルートやトランペットの信号音が不思議な2度の不協和音を醸し出す「プロローグ」は、すぐにピアノと弦による穏やかな歌へつながります。
「Arline And The Red Dress」は、木管と弦とピアノによる、これ以上ないくらいのチャーミングなワルツ。
『パーフェクト・ファミリー (House Arrest)』 (1996)
★★★
ハープやフルートが踊るような心地よいスコア。薄めの楽器法がジェームズ・ニュートン・ハワードのスコアを思わせる効果を出しています。舞曲のリズムやアイリッシュ・ハープを模したようなハープの使い方から考えて、これはアイルランドの片田舎の物語でしょうか?
『ザ・ターゲット (Shadow Conspiracy)』 (1997)
★★★★
聴き応え充分の力作。
ブロートン自身、監督の要請に応え、打楽器を増強した男っぽいスコアを書いていますが、決して荒いだけでなく、繊細な音色への配慮も事欠かない、実に立派なスコアです。思わず熱く燃えます!
プロートン自身にコメントしてもらいましょう。
体制に反抗する筋書きの精神をサポートするため、『ザ・ターゲット』のスコアは、映画同様、暗くパワフルで恐ろしくエネルギッシュです。『トゥームストーン』でも仕事をした監督ジョージ・コスマトスは、スコアに打楽器を用いるという強い希望を持っていました。このアイデアを実現するため、大管弦楽には6人の打楽器奏者が集められ、全員が本当に忙しく演奏し続けました。「打楽器」とはティンパニ、ボンゴ、コンガ、タム-タム、ブー・バム (boo bams) 、和太鼓、スリット・ドラム (slit drmus) 、小太鼓 (snare drmus) 、タボール (tabors) 、様々な大きさの大太鼓 (bass drmus) 、それにガラガラ (shakers) 、シンバル、シストルム (sistrums) 、ウォーターフォン (waterphones) 、カウ・ベル (家畜の牛の首に付ける鈴) 、ウッド・ブロックカウ・ベル (木魚) 、マリンバ、ゴング、ラトル (rattles) 、ラチェット (ratchets) 、鐘(チャイム)、そして小太鼓のばちでした。さらに管弦楽の楽器編成にはシンバロン (cimbalom) と、滅多に使われないコントラバス・トロンボーン (パス・トロンボーンより低い音域のトロンボーン) を含んでいました。
スコアは、一つの主要主題と短い下降動機を用いることで音楽的にまとめられています。もちろん、どんな映画音楽でも、スコアが劇的・感情的に必要な水準に達していなければ、どんな音楽的要素も充分とは言えません。判断するのはあなたです。
『シンプル・ウィッシュ (A Simple Wish)』 (1997)
★★★★
繊細で精巧な管弦楽スコアの秀作。フランス印象派、特にラヴェルの影響を強く感じますが、それがブロートンの音になっているところがすごい。
ちょっと捕らえ所のない「Rubberman」では半音階書法と管弦楽法が実に見事で、特に弦やトロンボーンのグリッサンド書法には思わず拍手!
「はげ山の一夜」そっくりに始まる「Claudia Pontificates」は、すぐ独奏ヴァイオリンがロマン派の標題音楽のような大げさな表情で現れますが、間もなく快速調の追いつ追われつの迫力スコアとなり、管弦楽の能力を充分楽しめます。
「Annabelle Believes」も「火の鳥」を思わせる管弦楽用法で始まり、レスピーギ風オーケスレーションで素晴らしい高揚を聴かせてくれます。アナベルの主題も簡素で美しい。最後にホルンの音が長く残るのもしゃれています。
まるで後期ロマン派〜近代フランスの交響詩のような音楽。素晴らしい!
『ロード・トゥ・ヘブン ("True Women")』 TVミニ・シリーズ (1997)
★★★1/2
これも文句なしの傑作です。アラモ砦で男と共に戦った女性たちを描くテレビ・シリーズのサントラ。
音楽はまことにシンフォニック。ここには『シルバラード』の派手さはないし、『トゥームストーン』のダンディズムとも無縁ですが、弦楽器を主体としたクラシカルな深い表現が感動を呼び起こします。情感溢れる繊細な表現もあれば、聴く者の胸を熱くさせるフル・オケのトゥッティにも事欠かきません。開拓時代の雰囲気を出すための民謡手法も、コープランドの影響を脱してブロートン独自の音になっています。
演奏するシンフォニア・オヴ・ロンドンは『ジャッジ・ドレッド』でも凄まじいパワーを聴かせた名人芸的オケで、ここでも最高の演奏を繰り広げています。どの楽器の音色も美しいのですが、特にチェロの合奏はいい音を聴かせます。ホールの残響をたっぷり捉えた鮮明な録音も魅力。
(1998)
★★★★★
やってくれました。ブロートンががっぷり四つに組んでシンフォニア・オブ・ロンドンを鳴らせた、近年まれに見るシンフォニック・スコアの傑作です。その音楽の完成度の高さには驚かされます。
まずはその爆発するようなパワーに圧倒されます。ヒーリング・ミュージックのような捕らえ所のない音楽が蔓延している現代に、これほど明確な主題でこれほどきっちり音楽を組み立て、しかもこれほど興奮させてくれるとは、ブロートンは何という鬼才なのでしょう! 最初から最後まで、オーケストラは疾走しまくり。シンフォニック・スコア・ファンはこういう音楽を聴きたかったのだ!!
次いで、オーケストレーションの堅実さ。楽器一本がか細い線でメロディーをなぞるなんてことはまずなくて、必ずヴァイオリンとイングリッシュ・ホルンとか、フルートとオーボエとかいう具合に楽器が重ねられ、旋律線が補強されて、より重厚な響きを生み出しています。
(1998)
そのオーケストレーションもハーモニーと一体となってこそ意味を持ちます。ブロートンは、ジョン・ウィリアムズとはまた違った意味で7の和音を多用しますが、それが輝かしさを求める時は強烈な金管の合奏で響かせ、逆に甘いノスタルジーを醸し出したい時は木管のハーモニーで彩られた柔らかい弦のアンサンブルに任せる……といった器用さを見せています。
そして、主題を展開させる時の、動機操作の巧みさ。「ロビンソン一家」のテーマは、ある時は朗々と、ある時は縮小されて木管にちょろりと現れ、あたかも有名なパガニーニの「奇想曲(カプリース)」第24番の主題を思わせる姿になります。
シンフォニア・オヴ・ロンドンの素晴らしい演奏と録音も特筆されていいでしょう。
全部で70分強の音楽は、たった2週間半で書かれました。この間に、作曲、書き直し、ダビング終了数日前の書き直し、台詞や音響効果を最終のサウンドトラックに録音する作業……などが全て行われたのです。
ロンドンでの録音セッションの間、スティーヴン・ホプキンス監督はしょっちゅう、「すごいよ。でも、シーンは全然こんなんじゃない。今必要なのは……」と繰り返したといいます。
スコアに関して、プロートン自身が次のように解説しています。
スコアは基本的に「発進準備」の冒頭で聴かれるたった一つの主題に基づいています。これはほとんどのキューで土台として用いられ、様々な変奏型で現れます。別の主要主題はドクター・スミスのもので、彼を有害で悪意ある人物として描いています。注意深く聴けば、この主題はスコアの後の方で、蜘蛛と化したスミスの場面でも、歪められ、拡大された形で使われていることが分かるでしょう。
長い旅でしたが、どうか楽しんで下さい!
『ドクター・ジャガバンドー』/『クリッペンドーフ教授/幻の部族発見!?』 (Krippendorf's Tribe) (1998)
★★1/2
一人の男の嘘から原始部族がでっち上げられる喜劇。小刻みに動く音型は巧みに色付けられたオーケストレーションと一体になってコメディ的センスを醸し出します。「Faking the Rites」は原住民の儀式を表した音楽のようで、ちょっと『スター・ウォーズ』の「イウォーク・セレブレーション」を思わせますが、もっと活気に溢れ、生き生きしています。
『栄光への道/北極を目指した男たち (Glory And Honor)』 (1998)
★★★
冒険スコアで、管弦楽法が見事。サスペンス部分もアクション部分も音楽的だし、「Independence Bay」の盛り上がりは感動的です。
『N.Y.殺人捜査線 (One Tough Cop)』 (1998)
★★1/2
ピアノをフィーチャーしたやや暗めのスコア。管弦楽の使い方も効果的。
『Night Ride Home』 (TV)(1999)
★★★
ピアノと小編成の弦・管アンサンブルの柔らかな音色が、優しくノスタルジックで、どこか寂しげなサウンドを生んでいます。西部民謡風素材がロイ・ハリス的なテクスチュアで扱われてゆくのが興味深いスコアです。
『Ellen's Energy Crisis』 (TV?)(19??)
★★★★★
タイトル曲は大管弦楽を充分に鳴らしたわくわくするもので、明らかにプロコフィエフを意識した曲作りをしています。
凡例: <VD> =劇場未公開/ビデオ・タイトル
<TV> =劇場未公開/テレビ放映時タイトル
<1973>
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<1999>
