ジョン・バリー
John Barry   1933〜
早崎 隆志

★ イギリスのみならず、世界を代表する映画音楽作曲家の一人。その個性的な音楽と、ロック・バンドから大管弦楽までを自在に操る幅広いテクニックは、他の追随を許さない。
 若い頃スタン・ケントン楽団のジャズにしびれ、バンドを結成し、認められて映画界入り(1950年代末)した彼は、ジャズやロックといった、パンチの効いたアメリカン・サウンドの手法を大胆に取入れ、伝統的な映画音楽に衝撃を与えた。その後めきめきと実力をあげ、第一級の管弦楽スコアをものすまでになった。
 彼の作風は様々なジャンルが融合していて幅広いが、あえて言えば暗い情熱を秘めたシンフォニック・ポップスと言えようか。一筋縄ではいかない癖のあるメロディーやハーモニーが独特の、時として前衛的なバリー・サウンドを形作る。
 007シリーズ11作をはじめ、『真夜中のカーボーイ』(1969)、『レイズ・ザ・タイタニック』など、秀れた作品は枚挙にいとまがない。『野生のエルザ』(1966)、『冬のライオン』(1968)、『愛と哀しみの果て』(1985)、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)ではアカデミー作曲賞を受賞。
 最近は年輪を刻んだせいか、優しい、心を慰めてくれるような調べを書くのが得意になってきた。

=Contents=

  • =ジョン・バリー:歩みと作品=
  • =ジョン・バリー:名曲案内=
  • =ジョン・バリー映画音楽リスト=


    =ジョン・バリー:歩みと作品=

    先鋭なジャズにのめり込んだ青年時代
     ジョン・バリー (本名:ジョナサン・バリー・ペンターガスト Jonathan Barry Prendergast) は、1933年11月3日、イギリス北東ヨーク州に生まれました。
     父ジャック・バリーは何軒かの映画館や劇場を経営しており、ジョンも幼い頃から映画に親しんで育ちました。
     9歳 (1941年、第2次世界大戦の最中!) でピアノを弾き始め、映画音楽家になることを夢見て、地元の先生からピアノとトランペットを習います。間もなくヨーク寺院のフランシス・ジャクソン博士から正式な音楽教育を受け、その後ロンドンの音楽学校で作曲と楽器法を学びますが、出席率が足りず (!)、1948年、15歳で退学となります。
     その頃バリーはアメリカのビッグ・バンド、スタン・ケントン楽団のジャズに魅せられていたのです。、元スタン・ケントン楽団のアレンジャー、ビル・ルッソ (Bill Russo) から手ほどきを受けるほどでした。
     スタン・ケントンの演奏はシャープなブラスと近代的なハーモニーを用いた刺激的なもので、バリーのその後の音楽の方向性を決める上で決定的な影響を及ぼすのです。

     その後バリーは3年ほどバンドマンとして地方のジャズ・バンドで演奏して暮らしますが、やがて兵役に応じ、1950年代前半を軍隊で過ごします。しかしその間もスタン・ケントンから手紙で指導を受け、軍楽隊で働きました。
     兵役を終えると、彼は軍の友人たちと一緒に、自分のジャズ&ロック・バンド「ジョン・バリー・セブン」を結成します。1955年、22歳の時のことです。電子楽器も取り入れた斬新でジャジーなサウンドは評判になり、またそのアレンジの腕前が注目を集め、1957年には全国ツァーとテレビ出演で大人気となり、イギリスのレコード会社EMIと契約を結ぶに至ります。
     やがてレコードのプロデュースの腕前を買われ、バリー自身がEMIのレコーディング・ディレクターとして採用され (1957年=24歳)、超売れっ子クリフ・リチャードをはじめ、多くの看板アーティストをプローデュースしたりアレンジすることになりました。
     こうした経験を基に、間もなくテレビの音楽を担当するようになり、1959年にはいよいよ映画音楽に進出するのです。

    「007/ジェームズ・ボンド」で大ブレイク!
     最初の映画音楽は『狂っちゃいねえぜ』(1959) ですが、バリーの名に注目が集まったのは『007は殺しの番号 (ドクター・ノオ)』(1962) でした。この映画の音楽はほとんどモンティ・ノーマンが書いていますが、エレキ・ギターによるテーマ曲 (有名な「ジェームズ・ボンドのテーマ」)にはバリーが徹底的に手を加え、ビートの効いた現行ヴァージョンに仕上げたようです。

     同じ1962年、バリーはブライアン・フォーブス監督と出会います。

     私とジョンがはじめて逢ったのは、シェパートン・スタジオで『L字型の部屋 <未> (The L-Shaped Room)』(1962) を撮影中の時のことでした。私はこの映画に今流行している音楽、この映画のナイトクラブの場面にうまく合った曲を書いてくれる人を探していたんです。彼は私のところに打ち合わせに来て、撮影に立ち会ったんですが、恐ろしく内気な男に見えましたよ。そんな彼が、二日後には実に見事な曲を書き上げてきたんですから、私は彼がすっかり気に入りました。
     彼は私が知る音楽家の中で、誰よりも映画を愛している人ですし、かつまた自分が作曲するに当たっては、その映画に於ける音楽の効用、機能というものをとことん煮詰めた上でペンを取る人だと思います。
    (ブライアン・フォーブス)

     [柳生すみまろ『映画音楽 その歴史と作曲家』(1985) P.272-273 より多少改編して引用]
     フォーブス監督とはその後も『雨の午後の除霊祭』(1964)、『キング・ラット』(1965)、『哀愁の旅路 (The Whisperers)』(1966)、『間違った箱 <未> (The Wrong Box)』(1966)、『恐怖の落し穴 (Deadfall)』(1967) など、良質のドラマで一緒に仕事を続けていきます。

     バリーは翌1963年に Ember レコード社に移り、編曲・録音部長としてしばらく働きますが、この頃『007/ロシアより愛を込めて007/危機一発)』(1963) を単独で担当し、ライオネル・バート作曲の甘い主題歌を引き立てる辛味の効いたスパイ映画スコアの手本を書いて見せ、評価を高めます。
     しかし、バリーの才能が真に全開したのは『007/ゴールドフィンガー』(1964) だったと言って良いでしょう。
     この映画が撮られた頃、映画音楽はマンシーニの亜流が支配的でした。そこに登場した主題歌「ゴールドフィンガー」の何と鮮烈なこと! 目の眩むようなビート感と大胆不敵な転調効果は、シャーリー・バッシーのパワフルな歌唱とあいまって大ヒットとなり、映画音楽では異例のUSヒット・チャート第8位を記録しました。
     『007/ゴールドフィンガー』を通じて、バリーは「007 (ダブル・オー・セブン) 」という新しいスパイ映画の音楽の基本型を創造しました。それは、ハーマン・タッチとはまた異なる、暗く鋭いハードボイルドなサスペンス・スコアであり、クールであると同時に目のくらむような強烈な音楽なのでした。

     同じ年の『ズール戦争』(1964) は、バリーの別の側面を確立した、やはり記念すべきスコアです。アフリカの太鼓を前面に押し出し、金管でシンコペーションを強調した力強いスコアは、ジャズ&ロック世代バリーならではのものでした。
     また、『国際諜報局』(1964) はほぼ同じスタッフが007と同時期に作ったスパイ映画ですが、こちらの方が地味でリアルなだけ、音楽もジャジーな味のあるものです。こうしたシリアスなスパイものの音楽も、バリーの守備範囲の一つとなります。

    バリーのシンフォニック・スコア傑作群
     これ以降の数年間は間違いなくバリーの最盛期です。
     「スウィングング・ロンドン」を背景にした『ナック』(1965) のクールで最高にかっこいいシンフォニック・ジャズ、哀愁溢れるシリアス・スパイ・スコア『さらばベルリンの灯』(1966)など佳曲揃いですが、中でもこの時期のバリーの創作を代表するのは、生き生きとして清々しい『野生のエルザ』(1966) の音楽でしょう。伸びやかな弦楽の主題と金管・打楽器の醸し出すアフリカのリズムが程良くマッチして、絶妙な音楽の調和を生み出しています。このスコアがアカデミー作曲賞を受賞のもうなずけます。
    =ジョン・バリーの娘は有名写真家?!=

     1960年代半ばにバリーは女優ジェーン・バーキンと結婚し、1967年に娘ケイトをもうけます。
     その後二人は別れ、ケイトは母親ジェーンに引き取られ、育てられます。
     ジェーン・バーキンは恋多き女性で、フランスの歌手セルジュ・ゲンズブールとパリで同棲してシャルロット・ゲンズブールを生み (1971)、その後映画監督ジャック・ドワイヨンと愛し合い、ルー・ドワイヨンを生みます。
     母に連れられてパリに暮らしたケイト・バリーは、義父セルジュの影響を強く受け、ファッション・デザイナーを目指して勉強、19歳でデザイナーとしてデビュー、パリ・コレにも参加します。ところが間もなく写真に興味を持ってカメラウーマンに転身し、1996年からフリーの写真家としてパリのファッション雑誌『エル』、『DS』、『ヴォーグ』などで活躍しているのです。

     1968年にはフォーブス監督の『恐怖の落し穴 (Deadfall)』(1967) のためにスコアを書きますが、17分に及ぶ泥棒のシークエンスでは、並行して進行する演奏会の場面とクロス・カットで進められ、音楽はこのコンサートで演奏されているギター協奏曲 (ギターと管弦楽のためのロマンス) だけですが、これはバリーが前もってアンダースコアとしても効果を発揮するよう計算して書いた曲なのです。なおこのシーンに登場する指揮者はバリー本人です。
     さらに、中世イギリスを背景とした重厚な舞台歴史劇の映画化『冬のライオン』(1968) では、前衛的と言えるほど暗く、重い響きを基本として人間心理の暗黒面を見つめながら、見(聴き)終わった観客に深い感銘を与える優れたスコアを作曲し、再びアカデミー作曲賞を手にしたのです。
     なおこの時代、トム・ジョーンズが熱唱する『007/サンダーボール作戦』(1965)のすさまじい (本当にすさまじい!) 主題歌や、『007は二度死ぬ』(1967)の流れるように美しい主題歌など、007シリーズの主題歌が軒並みヒットしたことも特筆しておくべきでしょう。

     「傑作の森」はまだ続きます。
     1969年には『女王陛下の007』(1969) が書かれます。ダークでかっこいいテーマ曲、美しい挿入歌「愛はすべてを越えて」、スペクタクルな活劇スコア「ピズ・グロリア峰の戦い」など盛り沢山で、007シリーズのスコアの最高作と考える人も少なくありません。
     同じ年の『真夜中のカーボーイ』(1969) もダークですが、こちらは夜の都会を描いた物憂いスコアで、ブルース・ハーモニカのトゥツ・シールマンスの音色が耳から離れません。
     そして『最後の谷』(1970)。これもダークですが、中世末期、30年戦争のドイツを描く史劇だけに、スコアのスケールも大きく、『冬のライオン』に似た壮大な感動が味わえます。

     以上のような1960年代のバリーの音楽は、一言でいえば、暗い情熱を秘めたシンフォニック・ポップスといったところでしょうか。不協和音や歪んだ旋律を敢えて使うような先鋭的なところがあって、耳当りは必ずしも良くないのですが、その強烈な個性が聴く者を捕らえて離しません。007シリーズがそうですし、『冬のライオン』、『真夜中のカーボーイ』、そして『フォロー・ミー』(1971)もその延長と言えます。

    作風の変化を経験する1970年代
     しかし、1970年代に入ると、ジョン・バリーの音楽は大きく変質するようになってきます。それは一言で言えば、ビートからメロディーへの変化です。
     それまでは先鋭的なジャズから導かれたブラスのアタックなどに基づく強烈なビート感に裏付けられていた彼の音楽が、この頃から、バリーの音楽のもう一つの特色である伸びやかなメロディーの方面へ大きく方向転換していくのです。
     その兆しは、例えば『野生のエルザ』の美しいテーマにも聴かれましたが、この傾向は『約束』(1969) のテーマや『クイン・メリー/愛と悲しみの生涯』(1971) あたりから目立つようになってきました。
     例えば、キャロル・リード監督『フォロー・ミー』(1972) は『ナック』と同系統のジャジーなスコアですが、実に流麗な美しい「歌」になっています。
     また、007シリーズである『007/ダイヤモンドは永遠に』(1971) でも、主題歌はうっとりするほどの美しさを持っています。劇中スコアでは「月面車」「007」といったシャープで熱い曲があるのですが、バリーの音楽の変化は明らかです。

     1970年代半ばは映画界の低迷とロック&ポップス音楽の台頭によって、従来の映画音楽作曲家の仕事が激減する時代です。バリーも例外ではなく、この期間の作品は極めて少なくなりますが、この時期に書かれた『ロビンとマリアン』(1976) を聴いても、熱いビートに支配された音楽ではなく、今で言うヒーリング (癒し) 系に近い、心の安らぐサウンドが中心となっています。
     『スター・ウォーズ』(1977) の成功で、1970年代終わりからシンフォニック・スコアが見直され、バリーの元へも注文が再び増えるようになります。その時彼が書いたのは、『我が生涯の大統領/ルーズベルト夫人風雪の60年』(1977) や、『ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど』(1979) などの、大変メロディーの美しい名曲の数々でした。

     こうしたヒーリング系・美メロ系の一大頂点を築いたのは、『ある日どこかで』(1980) です。ノスタルジーに満ちた映画の美しさもさることながら、バリーのテーマ曲の何と懐かしく、憧れに満ち、深く心の襞に染み込むことでしょう! これはバリーの最高傑作の一つと言って過言ではありません。

     一方、ビター系スコアも健在で、シンフォニックなスペース・オペラ大作『ブラックホール』(1979) では充分に色彩的な管弦楽を駆使しながら、決してジョン・ウィリアムズの亜流ではなく、バリー独自のダークな音を鳴らしているのが素晴らしいと思います。ただ『007/ムーンレイカー』(1979) はそれまでの007スコアに較べるとパンチに欠け、『スタークラッシュ』(1978) もちょっと安っぽいのですが。

     こうしたスペクタクル路線と美メロ系は、1980年の『レイズ・ザ・タイタニック』(1980) で奇跡的な融合を見せます。充分にサスペンスフルでありながら、タイタニックの主題の何と雄大で美しいこと! タイタニック号が海上に浮上するシーンの音楽は何回聴いても感激で胸を熱くさせます。これもバリーの代表作として後世に残るでしょう。

    1980年代−−スロー・テンポのメロディー・メイカー
     1980年代、50代になったバリーは、さらにテンポの遅い、ヒーリング系サウンドに深入りしていきます。例えばサスペンス・スコアでも、『白いドレスの女』(1981) のように、ゆっくりとうねるようなサックスと弦の響きで悠揚迫らぬタッチで描き、60年代の不協和音とアタック音に彩られたスコアとはずいぶん違います。
     こうした方向に進む中で、1980年代前半にいくつもの名曲も生み出されてます。『ハイ・ロード』(1983) と『007/オクトパシー』(1983) 主題歌「オール・タイム・ハイ」は、メロディの美しさではダントツであり、それを豊かな管弦楽が伴奏するという、1990年代まで続くバリー後期の手法を確立した作品としても重要です。また『9月まで抱きしめて』(1984) は、同じ美しい旋律でありながら、やや意外な転調をする点で60年代バリーを思い出させます。
     これら3作は、いずれもメイン・テーマは一つか二つしかなく、劇中の他のアンダースコアはもっぱらこれらメイン・テーマの変奏で作られる、という点でも90年代の彼の作風を先取りしています。
     こうした作曲法は、普通の作曲家がやれば「手抜きだ!」と怒られますが、バリーのこれらのスコアのように、ここまで美しいと、どこまででも繰り返して欲しい気になります。
     とはいえ、『ハイ・ロード』や『007/オクトパシー』では大きく盛り上がるスペクタクル・スコアも用意されていて飽きません。

     この路線の頂点が『愛と哀しみの果て』(1985) です。たっぷりとしたテーマ主題、じっくり噛みしめるようなテンポ、ハープや中低音弦の分散和音による幅広い伴奏、短い音型の果てしない繰り返し……1970年代後半からバリーが追求してきたスタイルが、ここに完成したという感じです。人生の哀楽を全て包み込むような音楽は感動的であり、アカデミー作曲賞を獲得したのもむべなるかな、と思わせます。
     但し、あまりにも落ち着きすぎて、『007/オクトパシー』や『ハイ・ロード』よりも退屈に感じるのも事実です。

     1980年代後半にもヒーリング系では『ペギー・スーの結婚』(1986) などの傑作を書く一方、『007/リビング・デイライツ』(1987) は以前の007に較べて明らかに精彩がありません (音はきれいなのですが……)。
     むしろ、この時期の勇ましいスコアとしては『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』(1986) の方が良くできています。意表を突く転調を使った「ハワードのテーマ」はバリーらしいし、「ハワードの子守歌」も心に何の抵抗もなく入り込んでくる優しいメロディです。

    マンネリ? 創作力低下?
     1990年には『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990) がバリーに4つ目のオスカー(アカデミー作曲賞)をもたらしますが、技法的にも表現上も、『愛と哀しみの果て』と大きな差はありません。「ジョン・ダンバーのテーマ」は確かにスケールが大きく感動的ですが、ちょっと聴いただけで『愛と哀しみの果て』と区別できる人はどのくらいいるのでしょうか。
     むしろ1992年度アカデミー作曲賞にノミネートされた『チャーリー』(1992) の方がハーモニーに新しさがあるだけ、聴いていて面白いと言えます。もっともこれも低弦とハープの分散和音を伴奏にした緩いテンポの曲で、肌触りとしては同じなのですが……
     1994年の『スペシャリスト』(1994) は久しぶりにボンド・スコアのテイストを取り戻してくれました。ただそれでも60年代の熱いスコアと較べると、生ぬるくて中途半端な感じが拭えません。
     アイマックス映画『遥かなる夢・ニューヨーク物語 (Across the Sea of Time)』(1995) のスコアも極めて美しい音楽ですが、やはり全編ゆったりとした4拍子で、繰り返しのフレーズばかり。演奏は美麗だし、盛り上がる曲もあり、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』よりは変化に富んでいますが、90年代のバリーは、同じ曲を際限なく書き直しているように見えます。

     昔のジョン・バリーを知る者にとっては、最近のバリーはちょっと物足りない。彼にはもっと熱く燃えるスコアを書いて欲しい。なぜなら彼にそれを書く能力があることを、我々は知っているから−−−古いバリー・ファンには、こんな共通の思いがあるのではないでしょうか。

    (もっときちんとして評伝は後日記載の予定。すんません!)


    =ジョン・バリー:名曲案内=
     鑑賞の手引きとして、筆者の主観でによる5段階評価を付けています。
     最高は★★★★★、最低は


    007/ゴールドフィンガー』 (1964)

    ★★★★★

     007 (ダブル・オー・セブン) の音楽と言えばジョン・バリーだろう。刺激的な主題歌といい、サスペンスにあふれたオーケストラ・サウンドといい、その素晴らしさは第一作『007は殺しの番号(007/ドクター・ノー)』(1962) から最新作『007/リビング・デイライツ』(1987) に至るまで変わっていない。
     ただバリーの音楽が本当の彼らしさを見せはじめたのは第3作『007/ゴールドフィンガー』からである。ここで初めて主題歌を受け持った彼は、実に強烈なテーマソングを書いた。シャーリー・バッシーの熱唱もさることながら、ビートの効いたリズム、パンチ力のあるオーケストレーション、そして目の覚めるような転調など、バリーの音楽の印象は鮮烈だった。
     主題歌以外にも、勢いの良い「マイアミへ」ほかの強烈な色彩をもった生きのいいスコアが満載。その多くが普通の楽典(音楽理論の教科書)をことごとく無視した斬新な手法を使っているのも肯ける。


    007/サンダーボール作戦』 (1965)

    ★★★

     トム・ジョーンズが熱唱するすさまじい (本当にすさまじい!) 主題歌が印象的。
     レコーディングの際、ジョン・バリーに「最後の音を出来るだけ長く伸ばして」と言われたトム・ジョーンズは、頑張りすぎて気を失いかけた。


    ナック』 (1965)

    ★★★★★

    (詳細は後日記載の予定。ごめんね!)


    野生のエルザ』 (1966)

    ★★★★★

     このように優しく暖かいオーケストラ・サウンドもバリーの得意とするところ。
     アカデミー作曲賞受賞。


    007は二度死ぬ』 (1967)

    ★★★★

     007シリーズに付けたバリーの音楽はおしなべて水準が高いが、これもその一つ。この映画は日本が舞台になっていた。
     主題歌「007は二度死ぬ」はナンシー・シナトラが切なく甘ったるく歌っており、『ゴールドフィンガー』とは好対照。曲自体も流れるように美しく、ツボを得た転調が新鮮で、夢見るような歌に仕上がっている。
     アンダースコアでも、オスティナート(繰り返し)効果で興奮を高める「空間のカプセル」など佳曲揃い。
     なお、バリー自身は主題歌を彼が発見した若い黒人女性歌手に歌わせたいと思ったが、プロデューサー側の意向で容れられなかったという裏話がある。その黒人歌手とは、アレサ・フランクリンだった。


    冬のライオン』 (1968)

    ★★★★★

     バリーの本格的なシンフォニック・スコアの傑作。
     中世イギリス、プランタジネット朝を舞台にヘンリー2世と、その妻エレノア、その子・獅子心王リチャード1世たちの確執を描いた映画で、ジョン・バリーは内容の濃い歴史ドラマにふさわしく、重厚な音楽を付け、1968年度アカデミー作曲賞を受けている。
     中世ヨーロッパを舞台にした作品なので、バリーも音楽にリディア旋法などの教会旋法を取り入れ、それがまた不可思議な感覚を醸し出す。
     暗くシャープなメイン・タイトルは素晴らしい。ラテン語の歌詞を歌う合唱が陰惨な印象を強める。
     また、壮大に盛り上がる終曲も聴きもの。曲は荒涼とした感じに始まるが、やがてヘンリーとエレノアの和解を示すように明るくなり、最後は弦が活発に上行音型を繰り返す上に、金管が大きくメイン・テーマを吹奏し、感銘深く終わる。


    真夜中のカーボーイ』 (1969)

    ★★★1/2

     ブルース・ハーモニカの第一人者トゥーツ・シールマンス (ジョン・ウィリアムズの『続・激突!』、『シンデレラ・リバティ』、それにテレビの子供用教育番組「セサミ・ストリート」テーマ曲インストルメンツ・ヴァージョンでも有名) をフィーチャーしたテーマ曲が、夜の都会の香りに満ちており、秀逸。
     ニルソンの「うわさの男」も使われている。

    (詳細は後日記載の予定。ごめんちゃい!)


    女王陛下の007』 (1969)

    ★★★★★

     このスコアは、数ある007シリーズの音楽の中でも特に出色の出来栄え。
     メイン・タイトルは暗くシャープでかっこいい。
     主題歌「愛はすべてを越えて」は、ルイ・アームストロングのだみ声で歌われるが、映画のラスト近くでは弦楽合奏とフルートでたっぷりとしたテンポで演奏され、それもまたジョン・バリー楽団の純粋で凝縮した音の美しさが味わえる。


    フォロー・ミー』 (1971)

    ★★★1/2

     60年代のイギリスには(イギリスには限らなかったが)、ビートルズ旋風が吹き荒れ、音楽のロック化、ポップス化が進んだ。もちろんバリー自身もそうした波に乗って売りだしてきた一人だったが、『真夜中のカーボーイ・(1969)やこの『フォロー・ミー』ではことにポップに仕上がっている。
     『フォロー・ミー』のメイン・タイトル・テーマ「フォロー・ミー」は、しっとりとした弦楽器のフレーズを背景に、ロズとジョンのファルセットによるヴォーカルがムードたっぷりに歌われる。


    ブラックホール』 (1979)

    ★★★★★

     ディズニー・プロのSF冒険映画で、バリーはこの映画にダイナミックで色彩豊かな管弦楽スコアを付けた。しかもそれがJ.ウィリアムズらの亜流ではなく、ちゃんとバリー自身の音になっているのがさすがである。
     力強く華やかな「序曲」では、ちょっと変わった音の動きがバリーらしい。
     「メイン・タイトル」は、漆黒の宇宙空間で回転する恐るべき時空間の歪み、ブラックホールを音で見事に表現した音楽。ハープのグリッサンドが凄惨とすら言える印象を与える。
     「シックス・ロボッツ」は007を思い出させる暗くシャープで美しい音楽。
     「イントゥ・ザ・ホール」では、ブラックホールへ突入し、他の並行宇宙へ抜け出すまでの切迫した幻想的な場面を、管弦楽の能力を駆使して色彩豊かに描く。


    レイズ・ザ・タイタニック』 (1980)

    ★★★★★

     「タイタニック号」のテーマの何と雄々しく、美しく、感動的なこと! 導音 (音階のシの音) を長く伸ばして和声的に解決させず、7の和音 (セブンス) の美しさを際立たせたバリーの音楽的本能も素晴らしいし、鮮やかな管弦楽法も見事。
     この作品が『ある日どこかで』と同じ1980年に書かれたことを考えると、1980年という年はバリーにとって第2の最盛期だったのかも知れない。


    ある日どこかで』 (1980)

    ★★★★★

     1980年代に入ると、年齢を重ねたせいか、とみに優しい、心を慰めてくれるような調べを書くようになります。『ハイ・ロード』(1982)、『愛と哀しみの果て』(1986)、『ペギー・スーの結婚』(1986)、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)など……。
     この系列の最高作は、何と言っても『ある日どこかで』にとどめを刺すでしょう。
     映画はロードショー公開では話題になりませんでしたが、テレビで放映されると爆発的人気を呼び、今ではカルト映画の一つとなっています。
     この映画の人気の秘密はノスタルジックで清楚な雰囲気にあるのですが、それはバリーの音楽によるところが大きいのです。心身共に疲れ果てた時、このサントラを聴いてみて下さい。不思議な慰めと安らぎが体全体に広がってゆくのが分かるでしょう。


    007/オクトパシー』 (1983)

    ★★★★★

     これも主題歌が美しく、アンダースコアも秀逸。

    (詳細は後日記載の予定。ごめんちゃい!)


    ハイ・ロード』 (1983)

    ★★★★

     流麗なテーマとアクション・スコアがバランス良く配分されている。
     やはり傑作『007/オクトパシー』と同じ年に書かれている。

    (詳細は後日記載の予定。ごめんちゃい!)


    ペギー・スーの結婚』 (1986)

    ★★★1/2

     スコアは少量だが、その時間が凍り付くような強烈なノスタルジーの表現が、鳥肌が立つほど秀逸。高音のヴァイオリンのユニゾンが、リディア旋法の音階をゆっくりとなぞり、過去に立ち戻った驚異と懐かしさを同時に表現している。

    (詳細は後日記載の予定。ごめんちゃい!)


    ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』 (1986)

    ★★★1/2

     単純だが、それだけになかなか楽しいスコア。

    (詳細は後日記載の予定。ごめんちゃい!)


    遥かなる夢・ニューヨーク物語』 (1995)

    ★★★

     作曲者がイギリス室内管弦楽団を振ったサントラ演奏は、文句の付けようがないほど美しい。美しいのだが、それがあまりにも美しいので、また注文を付けたくなる。
     最近の彼の音楽が全部このパターン(スローテンポの優しいメロディが、弦の分散和音を背景に演奏される)なのはちょっと不満だ。しかもただの繰り返しが多い。
     バリーは本来、ロック・バンドから大管弦楽までを自在に操る幅広いテクニックを持った個性的な作曲家だ。若かりしバリーの「俺に触ると火傷するぜ」みたいな、焼け付くような奔放な音楽も、また聴きたいと思うのはぼくだけだろうか。


    =ジョン・バリー映画音楽リスト=

    凡例: <VD> =劇場未公開/ビデオ・タイトル
        <TV> =劇場未公開/テレビ放映時タイトル


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    ©2001 早崎隆志 All rights reserved.
    更新日:2001/02/12

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