ラテン語の原語「カントゥス・フィルムス」のままでも使われる。
中世ヨーロッパでは、奇妙なことに、旋律を作曲することは作曲家の仕事とは考えられていなかった。僧侶や高級市民であった当時の作曲家は、既成の旋律をいかに上手に組み合わし、音楽を構成するかを職としていた。旋律そのものを作り出すことは、ジョングルールと呼ばれる卑しい身分の辻音楽家の仕事だったのである。 そういうわけだから、他人の旋律を無断借用することは当時は当然だった。このようにして、ある曲を作るのに基礎として引用された旋律のことを「定旋律 (カントゥス・フィルムス) 」と言う。最も使われたのは、当時最もポピュラーだったグレゴリオ聖歌の旋律である。 中世からルネサンス初期には、このような聖歌を定旋律としたミサ曲やモテトゥスが非常に多い。